婦人科

ライフステージごとの不調やお悩み

ライフステージごとのお悩み女性は二次性徴を伴う思春期にはじまり、性成熟期ののちに、更年期・老年期へと至ります。これらの各段階をライフステージと呼びます。ライフステージは、卵胞ホルモン (エストロゲン)の影響下にあり、それぞれのライフステージで身体の状態が大幅に変化します。これらの変化には生活習慣も関与します。

婦人科の病態・病気はライフステージごとに異なるため、当院ではそれぞれの方のライフステージやライフスタイルにきめ細かく合わせた診療を通じて、女性が末永く健康で快適に過ごすために必要なサポートを行っています。年齢やお悩みの内容にかかわらず、お気軽にご相談ください。

思春期 (8歳~18歳頃)

思春期はホルモンバランスが大きく変化する時期であり、「生理が来ない」「生理が不順」「生理が重い」「生理期間が長い」「経血量が多い」など、生理のトラブルが起こりやすい時期です。生理トラブルは成長するに従って落ち着いていくことも多いのですが、時として早急な検査や治療が必要になることもあります。卵巣腫瘍をはじめ、視床下部・下垂体・甲状腺・性腺などの内分泌疾患といった、早期の適切な検査や治療が必要な病気や、子宮内膜症・多嚢胞性卵巣症候群 (たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)・子宮形態異常といった将来の不妊や早産・流産のリスクにつながる病気がないか、しっかり調べることが重要です。子宮形態異常は女性の5%程度に発生するとされており、決して珍しくない疾患です。他にもおりものやかゆみ、腹痛など、気になる不調や症状にも幅広く対応しています。
なお、思春期の方は内診に強い抵抗感を持つと思われますので、当院では検査方法に関して患者さんとしっかり相談して決めています。当クリニックでは、内診を希望されない方には行いませんので、安心してご相談ください。

思春期の患者様は、思春期ゆえの心身の未熟性、部活動・学習塾などの日常生活習慣、睡眠不足、学校での人間関係など、様々な問題が複雑に関与して、下記の不調をきたしていることがあります。なるべく時間をかけて話を伺い、診療するよう注力しておりますが、場合によっては産婦人科とは関連が乏しく、対応できないことがございます。あらかじめご了承ください。

思春期によくあるご相談

生理がこない (無月経)

15歳以上になっても生理がはじまらない場合を原発性無月経と言います。これに対し、生理がはじまってその後来なくなった場合を続発性無月経と言います。いずれも婦人科への受診が必要です。

原発性無月経の場合は、視床下部や下垂体、性腺などに何かしらの異常がみられる場合があります。これに対し、続発性無月経の場合には、過度な運動、体重の急激な増減、ストレスなどが原因で起こっている場合もあります。

いずれも、将来の不妊につながる可能性がありますので、早めにご相談ください。

生理が不順 (月経不順)

初経開始からの数年間はホルモンバランスが揺らぎながら大きく変化しますので、生理の周期も不順になりやすい傾向があります。月経不順には、生理周期がバラバラ・不正性器出血が続く・生理が止まってしまった、生理周期が長い・生理周期が短いなどがあります。

また、修学旅行、大事な試合や発表会、受験などが生理と重なりそうという不安がある場合は、お薬 (月経移動ピル)で生理の時期をずらすことができますので、ご相談ください。

生理が重い (月経困難症)

思春期には子宮の出口である子宮頸管が狭く、経血の体外への排出が滞って生理痛が強くなるケースがあります。市販薬の痛み止めや漢方薬などで解消できる場合もありますが、子宮内膜症の可能性もあり、その場合には適切な治療を受けることでお悩みを改善できます。快適に生活するためにも、お気軽にご相談ください。

体重が増えるのが怖い

思春期では、ちょっとしたきっかけで太ることへの強い嫌悪感を持ってしまい、過激なダイエットを行う方が多くいらっしゃいます。体重が大幅に減少するとホルモンバランスが崩れ、生理が止まってしまうこと (続発性無月経)があります。さらに、いくら痩せてもさらに痩せたいと歯止めがきかなくなり (神経性食思不振症)、命に危険が及ぶ可能性もあります。必要な場合には心療内科をご紹介するなど、患者さんの状態に合わせた治療をご提案しています。

性成熟期 (18歳~45歳頃)

卵胞ホルモン (エストロゲン)値が高レベルで安定する時期であり、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の発症リスクが上昇し、過多月経・月経困難症を起こしやすい時期です。また、高リスクのヒトパピローマウイルス (HPV)による子宮頸がんの発症リスクが高まります。
ライフステージとして、妊娠や出産を迎える方が多く、それに関連する疾患や、不妊症・不育症、性感染症などのトラブルも発生しやすい時期です。

性成熟期によくあるご相談

不正性器出血

多くは女性ホルモンのバランスが乱れることで生じます。また、排卵出血として生じる場合や、子宮がんなど深刻な病気の症状として生じている可能性もあります。早めに受診して、特に悪い病気が隠れていないかしっかり確かめましょう。

無月経・月経不順

基礎体温表をもとに、体質や状態に合わせた治療が必要です。生活指導を中心に、ホルモン剤や低用量ピルなどの処方を行いますが、漢方薬を併用した体質改善も有効な場合があります。

子宮筋腫

子宮筋腫は、女性の3人に1人が有するとされます。子宮の内側にできると月経の際に大量出血や痛みを生じやすく、子宮の外側に張り出していると、膀胱や腸、背骨を圧迫し、頻尿や便秘、腰痛をきたすなど、できた場所、個数、大きさにより性質や症状が大きく変わることが知られています。日常生活に特に支障がなければ経過観察で十分ですが、子宮筋腫と診断されたら定期的に婦人科を受診して下さい。経血量が多くなる (過多月経)場合や月経痛が悪化する (月経困難症)場合や、子宮筋腫の数が増える、大きくなるなどの経過によっては、治療が必要になります。

治療法は主に薬物療法と手術療法があります。薬物療法には、低用量ピルの内服をはじめ、偽閉経 (ぎへいけい)療法というホルモン療法があります。偽閉経療法とは、子宮筋腫の増大や増加に関わるエストロゲンの分泌を抑えて、閉経と同じホルモン環境下を作ることで、月経を止めて月経痛や貧血を改善させたり、子宮筋腫の縮小を図ることができます。偽閉経療法には、リュープリンなどの注射薬、レルミナなどの内服薬が用いられます。

偽閉経療法の副作用として、エストロゲンの減少に伴う更年期様症状 (のぼせ・ほてり・ホットフラッシュなど)があります。また、長期に用いる場合は、脂質異常症や骨粗鬆症に留意が必要です。

低用量ピルや偽閉経療法などの薬物療法を行っても症状が改善しない、子宮筋腫が縮小しない、薬物療法による副作用が強く、治療を継続できない場合などは、手術療法の対象となりますので、他の高次医療機関をご紹介させていただきます。

子宮内膜症

本来であれば子宮の内側にある子宮内膜が、子宮外で増殖してしまう病気です。子宮内の内膜組織は月経により毎月定期的に体外へ排出されますが、子宮外では内膜組織が排出されずに留まってしまいます。子宮外に留まった内膜組織は、膀胱や腸など周囲の臓器と癒着します。これにより、月経痛のみならず、排尿痛や排便痛、性交時痛などの症状をきたし、QOLを著しく低下させます。内膜組織が卵管周囲と癒着した場合は不妊症の原因となります。

なお、内膜組織は血液成分を含むため、特に卵巣に留まった場合は内膜症性嚢胞 (固まった血液成分が茶褐色でチョコレートのようにみえるため、チョコレート嚢胞とも呼ばれています)という卵巣腫瘍を形成します。内膜症性嚢胞は時に破裂し、急激な腹痛を来すだけではなく、卵巣がんを発症することもあります。

治療法としては、鎮痛剤や漢方薬をはじめ、低用量ピルなどによるホルモン療法があります。ただし、ピルを使用する場合、血栓リスクが上昇するため、定期的な検査が不可欠です。また、喫煙されている方、偏頭痛をお持ちの方はピルを使用できない場合があります。そのような方には黄体ホルモン製剤の内服薬 (ディナゲスト)をはじめ、子宮内放出システム (ミレーナ)が考慮されます。

これらの薬物療法では十分な効果が得られない場合や、不妊症の場合、早期の妊娠を希望される場合、卵巣がんの可能性がある場合等では、手術療法を検討することがあります。ライフステージに応じた将来のことも考えて、医師と十分相談し、適切な治療を選ぶことが重要です。

月経前症候群 (PMS)・月経困難症

月経前から月経中にかけては、様々な身体的・精神的不快感が生じます。主な症状には、下腹痛、腰痛、頭痛、吐き気、気分の落ち込み、イライラなどがあり、こうした症状でお悩みの場合には適切な治療で改善が可能です。鎮痛剤や漢方薬、低用量ピルなど、状態や体質、将来の妊娠を希望されるといった、事情にきめ細かく合わせた治療を行っていますので、ご相談下さい。なお、こうした症状には子宮筋腫や子宮内膜症をはじめとした婦人科疾患が背景に隠れている場合もあります。気になる症状がありましたらお早めに当院までご相談ください。

性感染症

淋菌やクラミジアといった性感染症の患者数が長く増加傾向にあり、近年は梅毒も増えてきています。当院ではこうした感染症に加え、性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどの検査と治療を行っています。

性感染症は、誰もがかかる可能性のある病気で、無症状で感染に気付かずに放置していると不妊症の原因になることもあります。また、感染に気づかず妊娠した場合は、先天感染による奇形や障害を来たすこともあります。

当院ではプライバシーに配慮した診療を行っております。かゆみ、おりものの増加、痛みや違和感など、気になる症状がありましたらお早めにご相談ください。

下腹部痛・腰痛

慢性的な下腹痛や腰痛、膨満感がある場合、子宮筋腫や卵巣腫瘍などが隠れている可能性があります。下腹部の急激な激痛がある場合は、卵巣腫瘍のねじれや破裂、子宮筋腫のねじれなど、緊急手術が必要な状態であることが少なくありません。また、下腹部の激痛に発熱・吐き気や嘔吐が伴う場合は、腹腔内に細菌が感染して骨盤内腹膜炎を起こしている可能性があります。そちらも早急に適切な治療が必要ですので、できるだけ早く受診してください。

低用量ピル・月経移動ピル・緊急避妊ピル (モーニングアフターピル)

避妊のためピルを検討している、大事な予定にぶつからないよう生理日を変更したいといった場合や、避妊に失敗してしまった場合などにも対応しています。

更年期 (45歳~55歳頃)

更年期(45歳~55歳頃)閉経の前後5年 (10年間)が更年期とされており、閉経の平均年齢は50.5歳ですので、45~55歳くらいまでが目安となります。閉経が近づくと、卵巣から分泌される卵胞ホルモン (エストロゲン)の分泌が大きく揺らぎながら減少していきます。こうしたホルモンバランスの崩れに加えて、この年代の女性は、社会的に責任ある立場になったり、仕事をリタイアしたり、子どもから手が離れたり、親の介護の問題が身近になるなどの変化を経験し、ご自分の加齢による変化も加わることで、様々な症状を起こしやすくなります。更年期の乗り切り方によって老年期の健康も大きく影響されますので、しっかりケアして快適に過ごすことが重要です。さらに、この年代は子宮体がんや乳がんなどの発症リスクが高まる時期でもあり、注意が必要です。

更年期によくあるご相談

不正性器出血・月経不順

更年期になると閉経に向かって卵巣機能が低下し、月経周期が乱れます。採血検査で女性ホルモン値を調べることで、更年期に入ったかどうかが予測できます。また、不正性器出血が生じることもあります。この時期は子宮体がんの発症リスクが高まる年代ですので、不正性器出血がある場合は婦人科検診を受けることが重要です。

ほてり・のぼせ・発汗・動悸

自律神経は、血圧や心拍数、体温、睡眠・覚醒のリズムなどをコントロールしています。

自律神経は主に交感神経と副交感神経からなり、血圧や心拍数、体温を高め、体を活動モードにするのが交感神経です。これに対し副交感神経は、血圧や心拍数を抑え、食べ物の消化や睡眠時に主に働き、体を休息モードにします。

これらの神経が適切に作用することが重要です。女性ホルモンの卵胞ホルモン (エストロゲン)は、自律神経の調節や作用に関わります。従って、女性ホルモンが減少し始める更年期世代では、自律神経の働きに乱れが生じます。この際、血圧や心拍数、体温の調節がうまくできなくなるため、ほてり・のぼせ・発汗といったホットフラッシュや動悸が生じます。また、不眠やイライラするなどの精神症状もみられます。これらの諸症状はホルモン補充療法 (HRT: hormone replacement therapy)や漢方薬 (加味逍遥散、黄連解毒湯、女神散、炙甘草湯など)を中心とした適切な治療によって改善が見込めるので、お気軽にご相談ください。

不眠・イライラ・抑うつ

ホルモンバランスが崩れると気持ちも乱れやすくなり、更年期には落ち込みや不眠、イライラ、抑うつなどの症状が現れることがあります。女性ホルモンの分泌低下によりこうした症状がみられる場合には、ホルモン補充療法 (HRT)が有効です。ただし、精神的な問題が身体的な症状として現れている場合があり、精神科や心療内科から処方されている薬の影響で月経が止まり、更年期症状が強く出るケースもありますので注意が必要です。当院ではHRTに加え、漢方薬や自律神経改善薬など、症状や状態にきめ細かく合わせた治療を行っています。

高血圧・脂質異常症・糖尿病

女性ホルモンは女性の身体を守るために働いており、更年期になって女性ホルモンの分泌が減少すると様々な病気の発症リスクが高まります。特に注意が必要なのは脂質異常症 (いわゆる高脂血症)です。女性ホルモンのエストロゲンは善玉コレステロール (HDL)の生産を促進し、悪玉コレステロール (LDL)の生産を抑える働きを持っていますので、エストロゲンの分泌が低下すると悪玉コレステロールが増えてしまい、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中を起こす原因となります。これまで健康診断で問題がなかった方も、更年期を迎えたら、検査結果をしっかり確認して早めに必要なケアをすることが重要です。また、更年期になると基礎代謝が低下して脂肪がつきやすくなり、高血圧・脂質異常症、糖尿病などの発症や進行リスクが上昇します。特に内臓脂肪型肥満があってメタボリックシンドロームの場合、検査数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が進行しやすくなりますので、注意しましょう。
当院では、更年期症状の治療に加え、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病の予防や治療もトータルに行っております。患者様の状態やライフスタイルなどにきめ細かく合わせた無理のない食事療法や運動療法についても丁寧にアドバイスしています。

 
高血圧や糖尿病につきましては、基本的にはこれら専門の内科診療を受けて頂くことを最優先としています。当クリニックでは、降圧薬や血糖降下薬の補助を担う漢方薬を用いております。
具体的には、高血圧とそれに伴う諸症状 (精神不安、いらいら、のぼせ、めまい、肩こり、頭重感など)に対し、大柴胡湯や黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、七物降下湯、釣藤散などの漢方薬を用いております。
また、肥満症に防風通聖散を用いております。
 
女性の動脈硬化性疾患発症予防のための管理指針 (日本女性医学学会編)による、脂質異常症の診断基準は以下の通りです。
 
LDL (悪玉)コレステロール 140mg/dl以上
HDL (善玉)コレステロール 40mg/dl以下
トリグリセライド (中性脂肪) 150mg/dl以上
 
LDL (悪玉)コレステロールや中性脂肪が上昇する脂質異常症では動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながる可能性があるため、注意しましょう。適度な有酸素運動と不飽和脂肪酸の摂取により善玉コレステロールを増やすことが重要です。
 

骨粗鬆症

骨は破壊と再生を繰り返しながら強度を保っていますが、このバランスが崩れて骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨折してしまう疾患が骨粗鬆症です。女性ホルモンのエストロゲン低下によって発症リスクが急激に高くなり、進行すると骨がスカスカになって身体の重みで背骨の圧迫骨折を起こすことがあります。女性に最も多い大腿骨頸部骨折は寝たきりにつながりやすく、生活の質が大幅に低下してしまいます。

一般的に骨粗鬆症は高齢者の病気と思われがちですが、更年期の段階から徐々に骨密度が減少して発症することが少なくありません。骨密度が減少しても自覚症状はほとんどなく、骨折して始めて症状が出現することが多いため、老年期という次のライフステージを見据えて、更年期のうちから骨の健康を日々意識し、対策することが重要です。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインに基づく、骨粗鬆症の診断基準は以下の通りです。

正常骨量 *YAM 80%以上
骨量減少 *YAM 70%~80%
骨粗鬆症 *YAM 70%未満
重症骨粗鬆症 *YAM 70%未満で、1か所以上の骨折を認める場合

*YAM (Young Adult Mean): 若年成人平均値と言い、20歳の方の骨密度を100%としたとき、その数値からどのくらい低いかをX線で評価します。なお、既に大腿骨や背骨の骨折を認める場合や、YAM 80%未満でも骨折がある場合は、骨粗鬆症と診断されます。

当クリニックでは、採血による骨粗鬆症の評価ならびに治療を行っておりますが、X線を用いた正確な検査は行っておりません。検査につきましては、近隣の武蔵境みつおか整形外科・リハビリテーション科をご紹介しております。

骨粗鬆症は、適切な食事や運動、日光を浴びる、エストロゲン補充療法、カルシウムや活性型ビタミンD、ビタミンKの摂取などによって予防が可能です。当院では、食事・運動療法など、ライフスタイルや状態に合わせた骨粗鬆症予防や治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

老年期 (50代後半以降)

女性ホルモンであるエストロゲンが慢性的に不足することで、骨粗鬆症、動脈硬化進行による心筋梗塞・脳卒中、認知症、頻尿・尿失禁・萎縮性腟炎・骨盤臓器脱などを起こしやすくなります。完全に治すことはできない病気ばかりですが、適切な治療やケアによって良好な状態を長くキープし、生活の質を保ち、快適に暮らすことができます。適切な予防や治療を受け、身体の状態を上手にマネージメントしていきましょう。

老年期によくあるご相談

脂質異常症

脂質異常症は、血液中の脂質である悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が過剰になる場合と、血液中の余分な脂質を回収する善玉のHDLコレステロールが不足する状態を含む疾患です。LDLコレステロールが過剰に蓄積することで、血管が狭くなり、弾力性が低下し、動脈硬化が進行します。その結果、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まります。エストロゲンの分泌が低下してきたら、これまで健康診断で問題がなかった女性でも、脂質の数値に注意が必要になります。適切な予防や治療を行い、動脈硬化の進行を防止しましょう。

萎縮性腟炎

閉経してエストロゲンの分泌が低下すると、外陰部や腟などが乾燥して萎縮し、自浄作用が低下して炎症を起こしやすくなります。萎縮性腟炎では、腟の乾燥、外陰部の痒み、性交痛、頻尿、出血といった症状を起こします。治療法として、エストロゲンの腟錠が用いられることがあります。また、陰部のかゆみや帯下に関しては、竜胆瀉肝湯などの漢方薬を使用することもあります。症状が軽度でそれほど気にならない場合もありますが、少しでも不快な症状が続く場合には、お気軽に当院までご相談ください。

エストロゲンの腟錠に関しては、こちらのホルモン補充療法 (HRT: hormone replacement therapy)をご参照ください。

骨盤臓器脱

骨盤底の筋肉の働きが加齢により低下することで生じます。具体的には、子宮下垂あるいは子宮脱 (子宮が膣から脱出した状態)をはじめ、膀胱瘤や直腸瘤など、膀胱や腸が脱出することもあります。

治療法として、これらの臓器が下垂しないようにペッサリーという器具を用いることがあります。なお、骨盤臓器脱は、骨盤底の筋肉の働きが腹圧に負け生じるため、骨盤底の筋力の維持・強化目的の体操も重要です。ペッサリーや骨盤底筋体操で治療困難な場合は、手術が考慮されます。

なお、骨盤臓器脱では、頻尿や尿漏れ、膀胱炎などの排尿異常や、陰部のかゆみ等の原因にもなります。これらの症状に対する治療法として、エストロゲンの腟錠漢方薬 (猪苓湯、竜胆瀉肝湯、八味地黄丸など)を使用することがあります。

 

エストロゲンの腟錠に関しては、こちらのホルモン補充療法 (HRT: hormone replacement therapy)をご参照ください。

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