月経 (生理)について
視床下部や脳下垂体のホルモンの働きによって、卵巣の中で卵胞が育ち、同時に卵巣から卵胞ホルモン (エストロゲン)が分泌されて子宮内膜が増殖します。卵胞ホルモン (エストロゲン)の分泌がピークを迎えると黄体形成ホルモンが分泌され、排卵が起こり、卵子が卵管に移動します。排卵が起こると卵巣から黄体ホルモン (プロゲステロン)が放出され、受精卵が着床しやすいよう子宮内膜はさらに肥厚します。
卵子が受精しなかった場合、厚くなった子宮内膜は不要になり、体外に排出されます。これが月経 (生理)です。こうしたホルモンバランス変化が毎月生じており、生理前後は心身に様々な症状を起こします。
昔は、生理は病気ではないと認識されていましたが、日常生活に支障を与える症状を無理に我慢する必要はありません。漢方薬、低用量ピル、ミレーナなどにより、生理にまつわる様々な症状は解消が可能です。また、生理に関連する症状がある場合、医学的に検査や治療が必要な疾患が隠れている可能性もありますので、悪化させないためにも婦人科を受診することは重要です。お悩みの症状がございましたら、お気軽にご相談下さい。
月経周期
月経周期は、月経の開始日から次の月経の開始日までの間隔であり、25~38日が正常範囲とされています。月経周期は、月経開始から排卵までの卵胞期と、排卵から次の月経開始日までの黄体期に分けられます。卵胞期には卵胞ホルモン (エストロゲン)の分泌が増え、黄体期には黄体ホルモン (プロゲステロン)の分泌が増えます。こうしたホルモンバランスの変化によって、生理前や生理中に不快な症状が現れることがあります。
生理前や生理中に起こる症状
- 頭痛
- 腹痛・腰痛
- 吐き気
- 生理以外の出血
- 生理周期が長い・短い・不規則
- 経血量が多い
- 乳房の張り・痛み
- 身体がむくむ
- 下痢・便秘といった便通異常
- にきび・肌荒れ
- 気分の落ち込み
- 強い眠気・過眠・不眠
- 怒りっぽくなる
- イライラ など
原因
月経痛 (生理痛)
生理の前や生理中には、子宮が収縮して下腹部や腰の痛みを起こすことがあります。子宮収縮作用を起こすプロスタグランジンの分泌が多い、または子宮の出口が狭く経血が滞る、冷え、ストレスなどによって痛みを起こすと考えられています。またホルモンバランスの変化によって、頭痛、めまい、吐き気、下痢などの幅広い症状を起こすこともあります。
重い生理痛は、子宮内膜症や子宮筋腫といった婦人科疾患の症状として生じている場合もありますので、市販薬などで解消できる場合にも婦人科を受診し、これらの病気が隠れていないかを確かめることが重要です。
不正性器出血
生理期間以外に出血が起きる状態で、症状は、生理と同じような出血があるケース、鮮血や血のかたまりが混じるケース、おりものに茶色いものが少量混じっているケースなど様々です。
機能性出血など、医学的に特に問題がない場合が多いですが、中には子宮頸がん、子宮体がん、子宮筋腫、子宮頸管ポリープなどの婦人科疾患が原因となって生じている可能性もありますので、不正性器出血がある場合には早めに受診して下さい。
月経不順
月に2回生理が来るなど月経周期が短すぎる、または数ヶ月に1度など長すぎる、そして月経周期がバラバラで不定期に生理が来る場合があります。
正常な月経周期は25~38日とされており、月経不順は、月経周期が24日以内の頻発月経、39日以上の稀発月経があり、それ以外に月経周期が不規則なケースや、2ヶ月以上生理がないケースも含まれます。
過激なダイエット、過度の運動、ストレスなどでホルモンバランスが乱れて、排卵が起こっていないことで生じている可能性があり (無排卵周期症)、他にも女性ホルモンが十分に分泌されずに生じることもあります。
過多月経・過少月経
経血量が多い状態を過多月経と呼び、少ない状態を過少月経と呼びます。
経血量は比較対象がないので、正常かどうかがわかりにくいのですが、日本女性医学学会では、1回の月経周期における経血量は37~43mlとされ、140ml以上を過多月経、20ml以下を過少月経と定義しています。
過多月経の目安として、当院では、ナプキンを1時間に1回以上交換しないと不安な場合や、血のかたまりがいくつも出てくる、生理2日目程度の出血量が何日も続く、めまいや立ちくらみなど貧血が疑われる症状があるなどを目安としてお伝えしています。子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫などの婦人科系の疾患が隠れている可能性がありますので、特に貧血症状がみられる場合は速やかに受診して下さい。
なお、子宮内膜ポリープなどの婦人科系疾患がない方でも、機能性出血として過多月経になる方がいます。当クリニックでは低用量ピルや漢方薬を用いて対応しております。
過少月経に関しては病的な問題は少ないとされますが、子宮奇形や子宮発育不全、ホルモン異常などが隠れていることがあります。経血量の減少は東洋医学的には血虚と考えられ、四物湯をベースとした漢方薬が有効とされます。
過長月経・過短月経
経血の持続日数は、1回の月経につき3~7日とされます。経血が8日以上を過長月経、2日以内の場合を過短月経と呼びます。一般的に、過長月経は過多月経を、過短月経は過少月経を伴います。原因や治療は過多月経・過少月経に準じます。
月経前症候群 (PMS)
生理のはじまる1~2週間前に身体的・精神的に多様な症状が生じ、症状が数日~10日程度持続し、生理が始まると症状が治まります。症状の内容や程度には個人差がありますが、主な症状として、イライラ、落ち込み、乳房の張りや痛み、肌荒れ、腹痛、頭痛、むくみ、体重増加などがあります。精神的な症状が強く現れて日常生活に支障を及ぼしている場合は、月経前不快気分障害 (PMDD)と呼ばれます。
生理前のこうした症状が3ヶ月以上ある場合にはお早めに受診して下さい。
PMSに対し、当クリニックでは主にドロスピレノン含有の低用量ピルを用いております。なお、ピルが服用できない方・希望されない方には、主に抑肝散などの漢方薬を用いて、症状の改善を図っています。
よくあるご質問
生理は比較対象がないので異常のあるなしを判断できず、受診が遅れやすい傾向があります。また、生理前や生理中は不快な症状が出るものと無理に我慢している方が多く、受診の目安などに関してよくご質問を受けます。ここでは、生理に関してよく頂くご質問とその答えを紹介しています。
生理が何日以上遅れたら、受診が必要ですか?
生理予定日から「1週間」経過しても生理が来ない場合は、市販の妊娠検査薬で確かめましょう。
妊娠検査薬で陽性の場合、妊娠している可能性があり、できるだけ早い受診が必要です。
陰性の場合も、不調や違和感などがある場合には、早めに受診して下さい。
陰性で、体調にも変化がない場合には、一時的な生理の遅れの可能性がありますので、少し様子をみて下さい。
なお、生理が2ヶ月以上来ない場合には、婦人科の受診が必要です。
生理周期が一定せず、次の生理日の予測ができないのですが、受診した方がいいですか?
月経周期の乱れはホルモンバランスの乱れなどによって生じることが多いです。
周期が25~38日、生理期間が3~7日におさまっている場合には特に問題ありませんが、それ以上変動するようでしたら受診して下さい。
基礎体温の記録は、女性がご自分の身体の状態を把握するために大きく役立ちます。起床時、起き上がる前に体温を測定し、毎日記録することで、月経期と卵胞期、排卵期、黄体期を把握できます。スマートフォンのアプリにも基礎体温管理ができるものがありますので、アプリを使って基礎体温を記録しましょう。
生理中に、レバーのような血のかたまりが出てくることがありますが、大丈夫でしょうか?
血のかたまりやドロリとした経血は、たまにある程度でしたら心配ありません。ただし、月経期間中に何度も出てくる場合には、婦人科系の疾患が疑われますので早めに受診して下さい。
生理が3日で終わってしまいますが、こうした場合も受診の必要がありますか?
経血量には個人差があり、さらに正確な量を計測するのも困難ですが、一般的には1回の月経で50cc~120cc程度の経血が出るとされています。日数にかかわらず、この程度の経血があるようでしたら特に心配はありません。ただし、これまでより経血量が明らかに少ない過少月経や、2日以内に生理が終わる過短月経が続く場合には、なんらかの問題が隠れている可能性がありますので当院までご相談下さい。
生理前におりものの量が増えて不安です。これは異常でしょうか?
おりものの分泌量は正常な場合でも排卵日前や生理前に増えるとされています。排卵日前や生理前に増えるおりものは心配ありませんが、月経周期に関係なくおりものが増えた場合は性感染症などの可能性があります。特に色や質感、匂いなどが普段とは違う場合は速やかに当院までご相談下さい。
生理前に理由なくイライラしてしまいます。どうしたらいいですか?
月経前には女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌増加により、イライラや怒りっぽくなる症状が現れることがあります。この時期に様々な症状を起こし、日常生活に支障を及ぼす疾患はPMS (月経前症候群)と呼ばれており、適切な治療で解消や緩和が可能です。生活や人間関係に悪影響を及ぼしやすい症状ですので、早めにご相談下さい。
生理予定日の一週間ぐらい前に、茶色の出血があったのですが受診は必要ですか?
月経日以外に出血が起こる不正性器出血は、少量の出血が1回だけ起こって繰り返さない場合は少し様子をみても大丈夫です。量が多い、長く続く場合は、子宮筋腫、子宮頸管ポリープ、子宮頸がんなどの病気の可能性があります。また、予期しない妊娠によって生じている可能性もありますので、速やかに受診して下さい。
なお、少量の出血が1度だけあって繰り返さないケースで、その後、生理予定日を1週間すぎても生理が来ない場合は市販の妊娠検査薬で調べてみましょう。
生理中に運動をしても問題はありませんか?
運動しても特に問題ありませんが、激しい運動は避け、スローペースのランニングなど、他の人に合わせる必要がなく、自分でコントロールできる運動をお勧めしています。また運動の前後にはストレッチをして身体をほぐしましょう。
生理予定日を1週間以上すぎても生理が来ないのですが、妊娠していると考えられますか?
市販の妊娠判定薬を使って調べて下さい。医療機関で検査を受けても検査精度に変わりはありませんが、ご不安やご心配なことがございましたら、お気軽に受診して下さい。